2022.06Space Power Technologies
×タツタ電線
必要な時に、必要な場所で、IoTを活用する。
ワイヤレス給電の実用化が、社会を変える。
遠いようで近かったワイヤレスとタツタの関係。
ワイヤレス給電を手掛ける株式会社Space Power Technologiesと提携する狙いや今後のビジョンをテーマにクロストークを実施しました。
組織名・肩書は取材当時のものです。
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経営企画部 溝口
調査担当部長 -
営業部門・DX推進室・
特命事項管掌 中村常務 -
株式会社
Space Power Technologies 古川
代表取締役 CEO -
株式会社
Space Power Technologies 武田
取締役 CFO
電線メーカーと無線給電。一見真逆の事業がつながった不思議な縁
株式会社Space Power Technologies(以下:SPT社)との提携に至った経緯をお聞かせください。(※以下、敬称略)
溝口昨年の6月頃から、弊社の新規事業につながる可能性のある分野で特長的な技術を持つスタートアップ企業の調査を始めました。その中で御社の名前を知り、コンタクトを取らせていただいたというのが最初ですね。お話をさせていただく中で弊社の電磁波シールドフィルムに興味を持っていただき、事業的に接点が持てる可能性があると考えました。
古川弊社の事業の軸であるワイヤレス給電は、安全性と電波干渉が実用化への大きな課題。我々が得意とするアンテナの技術だけでは解決することが難しく、どうしてもシールドを施す必要がありました。そうした中でお声がけいただき、是非今後ご一緒していただきたいと思いました。
武田そもそも我々の送電器や受電器というのは、電波を出して受けるだけではなく、電波を絞ってターゲットに当てることもできるんです。でもアンテナの特性から、電波が少し横に漏れるということがある。それをしっかりと遮ってくれるようなものを弊社としても必要としていました。そんな時にちょうど御社に見つけていただき、色々と意見交換をした上で、御社のシールド材を昨年11月末のマイクロウェーブ展や今年1月の清水寺のライトアップのデモンストレーションで使用させていただきました。
中村弊社は電線メーカーなので、本来ワイヤレスとは一番遠いところにあるはずなんですよね。でも、我々のビジネスの一つであるシールド材が、ちょうど御社のニーズに合致して、わりと近しい関係になった。なんだか不思議な縁を感じますね。
古川本当ですね。ワイヤレス給電というのは、研究開発されて実は40年以上経っているんですが、これまで実用化に至らなかったのは、やはりそれだけの課題があるからと認識しています。安全性、電波干渉、コストパフォーマンスという3大課題を溝口さんと共有させていただいた上で、これらに向けた解決策を打ち出していくという点に共感していただいたのだと感じています。
溝口メールやWEB会議の他、会社訪問もさせていただき、ワイヤレス給電のデモを拝見したり、しつこいくらい質問させていただいたりもしましたね(笑)。他社に比べて技術的優位性があるということはもちろん理解していましたが、一番印象に残っているのは、何よりお二人が非常に真面目で、ワイヤレス給電がフィットする事業領域がどこなのかをきちんと考えておられて、それに沿った事業構想を描いていらっしゃったこと。その中で、弊社の電磁波シールドフィルムがキーとなる部材の一つだということをご説明いただき、御社をご支援させていただくことが弊社にとっても事業拡大につながる可能性があるというふうに考えました。
武田しっかりと弊社の技術を理解していただける会社に見極めていただきご出資いただいたということ、 非常にありがたく思います。我々の歩んできた方向性が間違っていなかったということだとも感じています。
郵便ポストやバス停も!?あらゆるデバイスのIoT化で世の中をもっと便利に
そもそもワイヤレス給電に着目されたきっかけや背景についてお聞かせください。
古川もともとエネルギーの分野に関心があり、学生時代は宇宙太陽光発電について研究していました。でも宇宙開発の分野はとても規模が大きくて、ワイヤレス給電の実用化は少し先の話。そこで、地上でもっと利用できるシーンがあるのではないかと考えました。たとえば工場等で多いのは、通信はワイヤレス化できているのに電源供給は有線のままという環境。電源もワイヤレス化したいというニーズは以前からあったのです。
溝口パソコンも昔はLANケーブルだったのがWi-Fiになったし、イヤフォンももはや無線ですもんね。電力もいずれは無線になるんだろうと思います。有線から無線へ、という流れが不可逆なものであるならば、我々がその変化を起こす側に回るべきだろうと。変化に主体的に関われば、他社よりも早くビジネスチャンスを見出すことが出来るし参入障壁も築きやすい。弊社にとって電力供給というのは重要な事業領域の一つで、ワイヤレス給電はその中でも間違いなく有望な技術。御社と連携することによって、この分野の技術動向や知見を得て、弊社にとっても新しい事業機会を獲得していければと考えています。
中村私、電線自体は無くならないと思っているんですよ。ただ、新しいニーズやマーケットはどんどん広がってきている。この30年くらいで、今まで無かったものが世に出てきましたよね。たとえば携帯電話。じゃあ有線電話は無くなったかというと、無くなってはいない。 きっとワイヤレス給電も同じなんですよね。新しいことをどんどん取り込んでいきつつ、今やっていることにもきちんと地道に取り組んでいく。そういう両輪が大事だと思います。
古川仰るとおりです。今後はワイヤレス送電器自体もモビリティを持って、色々なところへ給電しながら周れるようになると考えています。そうすると、たとえば郵便ポストや紙の掲示板、バス停等のオフグリッドの(=送電線につながっていない)デバイスも全部IoT化することができる。同時に、たとえばスマートフォン等、いま目に見えているものも活かしていく。ワイヤレス給電をどこに適用すればユーザーが一番喜ぶかを常に考えながら、両輪で捉えていきたいですね。
ワイヤレス給電の先にある『新たな価値』
今後のビジョンについてお聞かせください。
古川弊社が目指すのは、ワイヤレス給電によって必要な時に必要な場所でIoTを使える社会。ワイヤレス給電を適用すれば利便性が上がるだろうところを先取りして適切なハードウェアとソフトを含めたシステムを開発し、市場投入していきたいと考えています。大切なのは単なるハードの提供ではなく、ワイヤレス給電の提供の先にどんな価値が見出せるか。今後連携させていただく中で、我々としても御社のこれまでの知見を是非活用させていただきたいと考えています。
武田ワイヤレス給電の実現とはつまり、世の中を変えていくようなプロセスに参加できるということ。社会を変えることで、より良い社会を築くことができると考えています。たとえば工場や倉庫内での各種装置の点検や管理、また橋や上下水道などインフラ施設での危険な場所での作業における苦労を無くしたり、熟練の方だけができたことを若い方でもできるようになったりと、社会的意義も非常に大きいはず。そういうところも睨みつつ、2026年12月を目標にIPOを目指していきたいです。また、大阪・関西万博への出展も計画しています。日本でビジネスを固めた次のステップでは、やはりより大きなマーケットである海外も視野に入れていきたい。万博はある意味で大きな展示会ですから、大いにアピールしたいと考えています。
中村是非頑張っていただきたいです。スタートアップの皆さんが夢を持って語られているのって、何だかすごく羨ましいですね(笑)。やはり何らかの夢や使命がないと、働くモチベーションや生きがいというのは出て来にくいもの。夢を持って語り、事業を一生懸命やられているスタートアップの方々と一緒になって取り組むことが、我々の力にもなるかなと思っています。
溝口そうなんですよね。こうした取り組みを通じて、少しずつでも社員のマインドが変わり、その結果として新規事業の創出に向けた新しいアイデアや議論がもっと生まれてくるといいなと期待しています。
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